分譲マンションの長期的な価値を維持するためには、適切なタイミングで大規模修繕工事を実施することが不可欠です。大規模修繕工事は、マンションの共用部分に対する大規模な修繕を行うものであり、建物の老朽化防止や資産価値の維持にとって重要な役割を果たします。

その工事を進めるにあたり、主に採用されるのが「設計管理方式」と「責任施工方式」の2つの方式です。本稿では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説し、札幌市におけるマンション管理の実例にも触れながら、マンション管理士の役割についてもご紹介します。


1. 設計管理方式とは

設計管理方式は、大規模修繕工事の計画から監理までを「設計・監理会社」(通常は建築士事務所)が主導する方式です。この方式では、以下のプロセスを経て工事が進められます。

  1. 建物診断
    設計・監理会社が現地調査を行い、建物の劣化状況を診断します。
  2. 修繕計画と設計書の作成
    建物診断の結果をもとに、工事範囲や内容を定めた修繕計画書や設計図書を作成します。
  3. 工事会社の選定
    複数の工事会社に入札を依頼し、比較検討した上で最適な工事会社を選定します。
  4. 工事監理
    工事中は設計・監理会社が監理を行い、工事内容が設計書通りに進んでいるかを確認します。

設計管理方式のメリット
  1. 透明性の確保
    設計と施工が別の業者に分かれるため、工事内容や費用に対する透明性が高くなります。札幌市のマンション管理組合でも、この透明性を重視するケースが増えています。
  2. 専門的なチェック
    設計・監理会社が専門的な視点で工事を監視するため、工事品質が確保されやすくなります。
  3. 入札によるコスト削減
    複数の工事会社からの入札を経て選定するため、適正価格で工事を依頼することが可能です。

設計管理方式のデメリット
  1. 費用が高くなる場合がある
    設計・監理会社への委託費用が発生するため、初期費用が割高になることがあります。
  2. 進行に時間がかかる
    設計書作成や入札のプロセスがあるため、工事開始までに時間を要することがあります。

2. 責任施工方式とは

責任施工方式は、工事計画から施工までを一つの工事会社が一貫して行う方式です。この方式では、設計書の作成や修繕計画の策定も工事会社が担います。


責任施工方式のメリット
  1. 手続きが簡略化される
    設計と施工を同じ会社が行うため、工事の進行がスムーズになりやすいです。
  2. 費用が抑えられる
    設計・監理会社への委託費用が不要なため、初期費用を抑えることができます。
  3. 迅速な対応
    設計と施工が一体となっているため、修繕内容の変更などに迅速に対応できます。

責任施工方式のデメリット
  1. 透明性の低下
    設計と施工が同じ会社で行われるため、工事内容や費用の透明性が低くなる可能性があります。
  2. 工事品質のリスク
    工事会社の利益優先の視点から、設計や工事品質が適切でない場合があるため、注意が必要です。
  3. 競争原理が働きにくい
    入札を行わないことが多いため、適正価格が得られない可能性があります。

3. 札幌市における大規模修繕工事の課題

札幌市では、寒冷地特有の気候条件により、建物の外壁や防水工事が特に重要視されます。雪や低温の影響で劣化が早まるため、計画的な修繕が必要です。しかし、マンション管理組合が自ら大規模修繕工事の方式を選定し、進行を管理することは非常に困難です。

また、札幌市内では高経年化マンションの増加に伴い、大規模修繕工事の重要性がますます高まっています。そのため、適切な方式を選定し、工事を円滑に進めるための専門的なアドバイスが求められます。


4. マンション管理士の活用を

大規模修繕工事を成功させるためには、設計管理方式と責任施工方式の違いを理解し、マンションの状況に合った方式を選ぶことが重要です。しかし、管理組合の理事会だけでこれらを判断し、進行管理を行うのは非常に難しいのが現実です。

マンション管理士は、大規模修繕工事において以下のような役割を果たします。

  1. 方式の選定支援
    マンションの状況や予算、住民の意向を踏まえ、適切な工事方式を提案します。
  2. 透明性の確保
    設計管理方式を採用する場合、入札プロセスの透明性を確保し、公平な選定を支援します。
  3. 工事監理の補助
    工事が適切に進行しているか、管理組合と連携しながら監視します。
  4. 住民間の合意形成支援
    修繕工事の進行においては、住民間の意見の対立が発生することも少なくありません。マンション管理士は第三者として、住民間の意見調整をサポートします。

まとめ

大規模修繕工事において、設計管理方式と責任施工方式にはそれぞれメリット・デメリットがあります。札幌市のような寒冷地では、建物特有の事情を踏まえた修繕計画が必要です。マンション管理士は、これらの方式を適切に選定し、透明性を確保しながら工事を進めるための専門的なアドバイスを提供します。

適切な修繕工事を行い、マンションの資産価値を維持するために、ぜひマンション管理士を活用してください。