マンション管理組合における「役員のなり手不足」は、全国的に深刻な問題となっていますが、札幌市などの都市部でも例外ではありません。この問題の対策を講じなければ、組合の運営が停滞し、建物の管理や資産価値の維持に支障をきたす恐れがあります。以下では、役員のなり手不足の原因とその対策について解説します。
1. 役員のなり手不足の原因
役員のなり手不足の主な原因として、以下の要因が挙げられます。
- 責任と負担感:管理組合の役員は、重要な意思決定やトラブル対応に関わるため、責任が重く、時間や労力がかかる業務が多いです。そのため、特に現役世代の方や忙しい方にとって、負担が大きく感じられ、役員を敬遠する傾向があります。
- 知識や経験の不足:マンション管理に必要な知識やスキルを持つ住民が少ない場合、役員に選ばれることに不安を感じる方が多いです。特に、建物の長寿命化に向けた適切な修繕計画の策定や、法的な対応を求められる場合、専門的な知識が必要になります。
- 無償・ボランティア性:役員の多くは無償で働いているため、時間を割いて責任を負うインセンティブが少なく、結果的に立候補者が少なくなる原因となっています。
2. 役員不足への対策
(1)役員報酬の導入
役員に報酬を支払うことで、インセンティブを与える方法があります。札幌市でも、一部の管理組合では役員に月額の報酬を設定しているケースが見られます。報酬を設定することで、役員業務に対する負担が軽減され、立候補者が増える可能性があります。
(2)外部委託や専門家の活用
管理組合の役員の業務の一部を外部委託することで、役員の負担を軽減する方法も効果的です。たとえば、札幌市では、管理業務をマンション管理会社に委託する管理組合も多く、これにより会計業務や日常の事務処理を外部に任せることができます。また、マンション管理士や弁護士、建築士などの専門家をアドバイザーとして活用し、専門知識を補完することで、役員の負担や不安を軽減することが可能です。
(3)役員業務の簡素化
管理組合の役員業務の手続きを見直し、負担を軽減することも重要です。例えば、会議の回数や内容を精査し、必要最低限の内容に絞ることで、役員に求められる労力を減らすことができます。オンライン会議の導入も、役員の参加を容易にし、住民の多忙なスケジュールに合わせやすくなります。
(4)複数年任期制の導入
役員の任期を複数年にすることで、毎年の役員選任にかかる手間を減らし、組合の安定的な運営を図ることができます。札幌市の一部の管理組合でも、このような制度を導入しているところがあり、一定の成果を挙げています。ただし、長期の任期制にはデメリットもあるため、住民の意見を取り入れながら慎重に導入することが求められます。
(5)役員候補者への研修の実施
役員の役割や管理組合の運営に関する研修を実施することで、知識や経験がない方でも安心して役員を務められるようになります。マンション管理士や管理会社が講師となり、札幌市などで管理組合向けに研修会を実施している場合もあります。これにより、役員候補者が必要な知識を習得でき、役員に対する不安を減らすことができます。
(6)輪番制の導入
住民全員が順番に役員を務める「輪番制」を採用することで、特定の人に負担が集中することを避けることができます。札幌市内の管理組合でも、この方式を採用するケースが増えています。輪番制により、住民全員が管理組合の活動に関心を持つようになり、役員のなり手不足の解消につながる可能性があります。
3. 札幌市での事例と効果
札幌市では、多くの管理組合が役員のなり手不足に悩んでいますが、上記の対策を組み合わせて取り組むことで、一定の効果を上げている事例もあります。例えば、役員報酬を導入した管理組合では、立候補者が増えただけでなく、住民の管理組合活動への理解も深まり、結果的にマンションの資産価値の維持につながったというケースも報告されています。また、外部委託や専門家の活用によって役員業務の負担が減り、役員業務に対する住民の理解が得られるようになった事例もあります。
まとめ
役員のなり手不足は、マンション管理組合にとって深刻な問題であり、組合運営に支障をきたす可能性があります。しかし、役員報酬の導入や外部委託の活用、役員業務の簡素化など、適切な対策を講じることで、なり手不足を解消し、住民が協力して組合運営に参加する環境を整えることが可能です。札幌市内でも、これらの対策を積極的に取り入れ、マンション管理の質を向上させることが求められています。役員のなり手不足の問題に対して、今後も管理組合や住民が一体となり、柔軟かつ実効的な対応を行うことが大切です。