「賃借人が役員になるよう、管理規約を変更したい」――
札幌市でも、担い手不足の理事・監事を解消するアイディアとしてこのような議論が持ち上がることがあります。

しかし、規約を改正する際は、法律(区分所有法など)との整合性が絶対条件。
そもそもの課題である「役員の担い手不足」への対策を優先すべきです。

今回は、

  1. 役員担い手不足は本当に賃借人に向くのか?
  2. 規約改正の落とし穴と法令リスク
  3. 本質的な解決を目指す3つの施策
  4. 札幌市で安心・安全な改正手続きのサポート

という視点で、実践的かつ現実的な検討ポイントを整理しました。


1️⃣ なぜ「賃借人」案が出てきた? 課題は担い手不足


✅ 理由:担い手がなかなか集まらない

  • 南北分断型やファミリー中心では担い手不足が深刻
  • 共働き・単身世帯が多いマンションでは役員の担い手が不足しがち
  • 一方、購入世帯が減少し、集まらない現実…

そこで「家に住んでいる賃借人にも役割を担ってもらおう」というアイデアが浮上。


✅ 目的は共益への参画と責任共有

  • 空き家対策ではなく、マンション全体を良くする
  • 賃借人にも共有者意識(資産ではないものの、生活環境への責任感)が芽生える
  • 地域で暮らす人間同士のコミュニティ形成にもつながる可能性あり

2️⃣ 規約を変えるときの落とし穴と法律リスク


⚠️ 区分所有法上の問題

  • 区分所有法では、管理組合の構成員は“区分所有者”と規定されており、計算についても所有者を基本とする
  • 賃借人は区分所有者ではないため、「○○は理事に就ける」という規定には潜在的な法的矛盾がある

⚠️ 広く規約を変えるリスク

リスク項目詳細
条文無効リスク賃借人にもなり手を広げる条文が区分所有法と抵触する恐れあり
総会・区分所有者の不満「持ち家と同じ1票」扱いされることへの抵抗が起こる可能性
責任と権限のバランス責任を負う位置にいる人が、ルールを守る義務を背負うことについての議論が必要
裁判リスク賃借人の就任によってトラブル対応の責任者が不明確になりやすいため、裁判上の責任主体が曖昧になる可能性がある

✅ 規約改正の際に注意すべきポイント

  • 区分所有法第67条以降の構成規定を踏まえる
  • 総会規約条文の文言は区分所有者を基本として明文化
  • 賃借人参画を「協力参加」型にとどめ、主導権については区分所有者に限定する形式を採用

3️⃣ 本当に効果的?役員不足の解消にはこちらの3策


✅ 案A:役割を分担して負担軽減

  • 「理事」ではなく「会計・総会の議事役・設備維持チーム」などを分割
  • ボトルネックである“理事長の負担”を分散させる

✅ 案B:役員報酬・手当の導入検討

  • 小額でも報酬を支払う条例(年間1万円程度など)を導入することで「やむを得ず引き受ける」仕組みを作る
  • 札幌市では実施例あり。管理業務の責任感がある人材を確保しやすくなる

✅ 案C:マンション管理士に役割分担する

  • 法的・契約的に神経を使う業務:専門家にアウトソーシング
    • 管理規約・契約書の改正
    • 長期修繕計画見直し
    • 管理会社との検証業務
    • 議案作成や住民説明
  • これにより、本来住民が担うべき判断や合意形成について時間的余裕が生まれる

4️⃣ 📌 札幌市の実例に学ぶ安全な改正手順


✅ ステップ①:最初に現状整理と目的の共有

  • 現在の理事構成、稼働実態や負担度合いを確認
  • 担い手不足の根本原因を明文化し、合意形成につなげる

✅ ステップ②:情報収集とモデル事例の比較

  • 他のマンションがどうしているか、札幌市や周辺地区の事例を調査
  • 行政機関、管理士の事例や助言を参考にする

✅ ステップ③:案の検討とリーガルチェック

  • 賃借人参画については「補助員」「補佐役」などの立場とし、理事への任命ではなくサポート体制に留める
  • マンション管理士が法文・条文レベルでチェックをする

✅ ステップ④:住民説明と総会承認

  • 修正案の意義を説明し、不安や懸念に対して柔らかくケア
  • 総会決議で95%以上の賛同を得られる資料づくりを重視

✅ ステップ⑤:運用して検証、必要に応じて再調整

  • 決議後も「実際に機能するか」を半年~1年で評価し、フォローアップの総会で再確認

✅ 最終まとめ


  • 賃借人を役員にするアイディアは、担い手不足への一つの突破口
  • しかし規約改正には法律的限界と実務リスクがある
  • まずは「役割分担・報酬・外部専門家との連携」で担い手不足への対応を試す
  • 規約修正は最終手段として、専門家(マンション管理士)の力を借りて適切に進めるべき

📣 札幌市の管理組合・理事会の皆さまへ

「賃借人に協力してもらいたい」―その気持ちはとても自然です。
しかし、法的リスクを避けながら一歩ずつ合意形成をするためには、マンション管理士の経験とアドバイスが不可欠です。

役員不足の不安は、適切なしくみと相談で必ず解消できます。
まずはお気軽にご相談ください。
皆さまのマンションがより良くなるお手伝いを、マンション管理士が全力でサポートいたします!