アスベスト(石綿)は、かつて建築資材として広く使用されていた鉱物繊維で、高い耐熱性や断熱性、耐久性を持っています。しかし、その微細な繊維を吸入すると健康被害を引き起こすことが判明し、現在では使用が全面的に禁止されています。マンションやビルを含む多くの建物では、建築当時にアスベストを使用していた可能性があり、その除去は居住者の安全を確保するために重要な課題となっています。
1. アスベストとは?
アスベストは、天然の鉱物繊維で、主に以下の特徴を持ちます:
- 耐熱性:非常に高温に耐えられる。
- 耐久性:長期間使用しても劣化しにくい。
- 加工性:細かく加工が可能で、さまざまな建材に使用される。
これらの特性から、1970年代以前に建設された建物では、断熱材、耐火材、建材(スレート板や吹付け材など)にアスベストが広く使用されていました。
しかし、アスベストを吸入すると健康被害が生じるリスクがあります。肺がん、中皮腫、アスベスト肺(じん肺の一種)などの重篤な疾患が報告されており、日本でも使用が全面禁止されました(2006年)。
2. 札幌市におけるアスベストの状況
札幌市のような都市部では、昭和中期に建設されたマンションやビルが多く存在しています。これらの建物では、アスベストが断熱材や防音材として使用されていた可能性があります。また、北海道特有の寒冷地仕様の建築物では、特に断熱性を高める目的でアスベストが用いられた事例が少なくありません。
札幌市では、建物の老朽化が進む中で、大規模修繕工事や解体工事の際にアスベスト問題が顕在化するケースがあります。居住者や近隣住民の健康を守るためには、適切なアスベスト調査と除去作業が不可欠です。
3. アスベストの調査と除去の流れ
(1) 事前調査
アスベスト除去を行う前に、まず建物にアスベストが含まれているかを調査します。具体的には以下の手順を踏みます:
- 建物の築年数や図面の確認:アスベスト使用が疑われる箇所を特定。
- 専門家による現場調査:目視確認や試料採取。
- 試料の分析:専門の検査機関でアスベスト含有の有無を確認。
(2) 除去工事
アスベストを含む建材が見つかった場合、安全かつ適切に除去するための工事を行います。除去作業は以下のように進められます:
- 隔離措置:作業エリアを密閉してアスベスト繊維の飛散を防ぐ。
- 湿潤化:アスベスト繊維が飛散しないように水を噴霧。
- 専用機材による除去:専門の業者が防護服と特殊な器具を使用して作業を行う。
- 廃棄物の処理:取り除いたアスベストは、特別管理産業廃棄物として適切に処分。
(3) 飛散防止措置
除去工事を行わない場合でも、アスベストが飛散しないように封じ込め(エンクロージャー)や囲い込み(カプセル化)といった措置を取ることがあります。
4. アスベスト除去の注意点
アスベストの除去に際しては、以下の点に注意する必要があります:
- 資格を持つ業者の選定:アスベスト除去作業は、国の認定を受けた専門業者でなければ行えません。安易な業者選定は危険です。
- 費用の適正性:除去作業の費用は高額になる場合が多いため、複数の見積もりを比較検討することが重要です。
- 近隣住民への配慮:作業中にアスベスト繊維が飛散すると、近隣住民に健康被害を及ぼす可能性があるため、事前の説明や通知が必要です。
5. 役員や居住者が知っておくべきこと
管理組合や役員は、アスベスト除去に関して次のようなポイントを把握しておくべきです:
- 法令遵守:アスベスト除去作業には、厳しい法規制があります(労働安全衛生法や廃棄物処理法など)。法令を遵守しないと、罰則や責任が問われる可能性があります。
- 長期修繕計画との連携:大規模修繕工事と同時にアスベスト除去を行うことで、効率的に作業を進められる場合があります。
- 費用の捻出:アスベスト除去は高額な費用が発生するため、修繕積立金や工事費の適切な管理が必要です。
6. マンション管理士等の専門家の助言を活用する重要性
アスベスト除去は、技術的にも法的にも非常に専門性が高い分野です。管理組合や役員が独自に対応することは困難であり、マンション管理士や建築士、弁護士などの専門家の助言が必要不可欠です。
マンション管理士は、以下のような点でサポートを提供します:
- アスベスト調査の必要性や手順の説明:管理組合に対して分かりやすく解説します。
- 適切な業者の選定支援:信頼性の高い業者を紹介し、見積もりの適正性を判断します。
- 住民への説明支援:アスベスト問題の重要性や対応方針について、住民に分かりやすく説明します。
札幌市のようにマンションが多い地域では、地域特有の課題にも精通したマンション管理士を活用することで、安心・安全な対応が可能になります。アスベスト除去は居住者全員の健康に直結する問題であり、専門家の助言を得て、適切な対応を進めてください。