「来年度から管理費と修繕積立金を値上げします」
――理事会からそんな議案が届いて、思わず声を上げた方もいるのでは?
「えっ、突然そんな…」「今の生活でもカツカツなのに」「払えない!」
そんな声が出るのも無理はありません。ですが実は、“払えないから拒否”は通用しないというのが現実です。
このコラムでは、札幌市のマンションを例に、管理費・積立金の値上げが必要になる背景と、管理組合がやるべき丁寧な進め方、そして区分所有者として何を知っておくべきかを、マンション管理士の視点からわかりやすく解説します!
🔶 値上げの背景にある「現実」とは?
まず、理事会がなぜ値上げを提案するのか。
その理由には、時代の変化と建物の劣化という、避けては通れない現実があります。
📌 管理費の値上げ理由
- 人件費の上昇(管理員・清掃員の確保が困難に)
- 物価上昇(消耗品・清掃資材などの値上がり)
- 管理業務の多様化(IT対応、防犯対策の強化など)
📌 修繕積立金の値上げ理由
- 長期修繕計画の見直しによる将来の資金不足
- 建築資材の価格高騰(ウッドショック・鋼材高)
- 施工人件費の増加(技術者不足が全国的に深刻)
札幌市のような寒冷地では、屋上防水・外壁凍害・融雪設備などの追加コストも想定されます。
これらが積もり積もって、「今のままの金額では将来対応できない」という判断に至るのです。
🔷 「払えない」は免罪符にならない
「でも本当に払えないんです…」という声も現実には多く聞きます。
しかし、経済的困窮を理由に値上げを拒否することは、法律上も制度上も認められていません。
❗ 区分所有者の義務は“平等”です!
区分所有法および標準管理規約では、管理費・積立金は**“各所有者が公平に負担する”ことが原則**です。
たとえ個人の家計が厳しくても、
- 「管理費を滞納する」
- 「積立金の値上げを一方的に拒否する」
ことはできません。
払えないからといって猶予や免除があるわけではなく、最悪の場合、訴訟や競売につながることもあります。
🔷 値上げの前にやるべきこと:支出の見直し!
とはいえ、「いきなり大幅な値上げ」は、納得感が得られにくいのも事実。
そこで有効なのが、支出の見直し=“コストカット”の検討です。
✅ 管理組合が見直すべき項目
項目 | 見直し内容 |
---|---|
管理委託費 | 業務内容と金額のバランスは適正か?他社との比較をしたか? |
清掃・点検業務 | 頻度が多すぎないか?内容の重複がないか? |
保険料 | 補償内容は過剰ではないか?他社と比べて割高ではないか? |
修繕工事 | 相見積もりを取っているか?過剰仕様になっていないか? |
特に札幌市では、冬季の除雪費や凍結対策費用が多く計上される傾向にあるため、見直す余地がある項目です。
🔷 段階的な値上げという選択肢
「来月から一気に1.5倍!」という話では、住民の反発も当然です。
そこで有効なのが、段階的に値上げする方法です。
📈 例:段階的な修繕積立金の引き上げ
年度 | 月額積立金(例) |
---|---|
現在 | 6,000円 |
1年目 | 7,000円 |
2年目 | 8,000円 |
3年目 | 9,000円 |
こうした“ソフトランディング方式”であれば、住民の生活設計にも配慮ができ、合意も得やすいという利点があります。
❗ ただし、段階的値上げには注意点も!
分かりやすくて納得しやすい段階的値上げですが、外部評価にはマイナスの影響があることも。
例えば、
- 住宅ローン審査で「修繕積立金が不足気味」と見られる
- マンション売却時に「将来大幅値上げの可能性あり」と警戒される
- 管理計画認定制度(札幌市も対象)で認定が受けられない場合も
つまり、段階的に上げて合意形成しやすくすることは可能だが、対外的には“管理の甘いマンション”と評価されるリスクがあるということです。
🔷 値上げ議案を通すには「説明力」と「納得感」がカギ!
住民の理解を得るために必要なのは、「説明」と「対話」です。
✔ 理事会がやるべき工夫
- 値上げの理由を数字と将来予測で説明する
- 長期修繕計画の見直し結果を開示する
- 支出削減の取り組みもセットで提示する
- 段階的な案や選択肢を示し、意見を聴く場を設ける
- アンケートなどを通じて住民の声を拾う
トップダウンでの決定ではなく、ボトムアップ型で合意形成を進めることが、信頼を生む鍵になります。
🔷 こうした場面でこそ“マンション管理士”が必要!
「長期修繕計画の見直しってどうやってするの?」
「どう説明すれば住民に伝わるの?」
「管理会社の契約、適正価格なの?」
そんな疑問に答え、冷静な第三者の立場で管理組合を支援できるのが“マンション管理士”です。
🧩 管理士ができること
- 値上げの妥当性をデータで検証・説明
- 管理費・積立金の相場比較と見直し提案
- 総会資料や住民説明資料の作成支援
- 管理会社との契約見直し・交渉支援
- 住民アンケートや合意形成のファシリテート
特に札幌市では、地域事情に通じたマンション管理士が活躍中です。
寒冷地特有の管理リスクやコスト構造を踏まえたアドバイスが受けられます。
✅ まとめ:マンションの将来を守るために、今、必要な決断を!
- 値上げは必要不可欠な判断であり、“払えない”では済まされない
- その前に、支出の見直しや段階的な増額提案など“合意形成の工夫”を
- 外部評価も視野に入れて、適正な管理レベルを目指すことが重要
- 専門的な判断・説明には、マンション管理士のサポートが不可欠!
📣 札幌市の管理組合・理事会の皆さまへ
「管理費・積立金の見直しに向けて、どう進めたらいいか分からない…」
そんなときは、まずはマンション管理士に相談を!
無料相談を行っている管理士も多数。お気軽にご活用ください。
値上げは、未来への投資です。
そしてその“投資判断”を支えるのが、私たちマンション管理士の仕事です。