◆ はじめに

「うちのマンションには長期修繕計画があるから安心!」
そう思っていませんか?

確かに、ほとんどのマンションでは管理会社が作成した長期修繕計画を利用しています。計画書を見れば、屋上防水や外壁塗装、エレベーター更新など、将来必要になる工事の時期と費用が一目でわかります。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

実は、多くのマンションでは計画の最終年度に収支がマイナスになっているのです。
つまり、計画通りに進めても「修繕積立金が足りない」状態に陥る可能性が高いということ。

本コラムでは、管理会社の長期修繕計画をどう見極め、どう活用すればよいのか、その秘訣をご紹介します。最後には、札幌市のマンション管理士としての立場から、専門家活用の重要性についても触れます。


◆ 管理会社の長期修繕計画は使ってもOK!

◎ まずは「計画がある」ことが大前提

長期修繕計画が存在しないマンションも少なくありません。その意味で、管理会社が計画を作成してくれているなら、まずは大きな安心材料です。

◎ 管理会社の計画の特徴

  • 標準的な建物寿命をベースに作成
  • 過去の施工事例や一般的な単価を参照
  • 実務経験豊富な担当者による現実的な試算

つまり、「管理会社が作ったからダメ」というわけではありません。むしろ最初のたたき台としては十分活用できます。


◆ しかし、多くのマンションで赤字に!

◎ 最終年度はマイナスが多発

問題は「その計画をそのまま信じていいのか?」という点です。
多くの長期修繕計画は最終年度に収支がマイナスとなっており、結果として修繕積立金の値上げが必要になります。

◎ なぜ赤字になるのか?

  1. 工事費の高騰を十分に見込んでいない
     → 建築資材や人件費の上昇が続いているのに、過去の単価のまま計算しているケースが多い。
  2. 建物ごとの個性を反映していない
     → 外壁タイル、機械式駐車場、給排水設備など、仕様によって大きな差があるにもかかわらず「平均値」で処理されてしまう。
  3. 積立金の増額を避けがち
     → 管理会社としては「値上げの提案は嫌がられる」ため、初期段階では低めに見積もる傾向がある。

結果として、「将来の大規模修繕に必要な資金が足りない!」という現実に直面するのです。


◆ 修繕積立金の算出根拠を導き出す秘訣

ここからは、管理会社の長期修繕計画を活かしながらも、実態に即した修繕積立金の根拠を導き出す秘訣をご紹介します。


1.国交省の標準様式に基づく見直しをする

国土交通省は「長期修繕計画標準様式」を公開しており、計画作成時の指針となっています。
これに準拠しているかどうかを確認することで、修繕項目の漏れや過小見積もりを防ぐことができます。


2.インフレや工事費高騰を加味する

建築費用は年々上がっています。特に札幌市は冬期施工の特殊性や輸送コストが影響し、全国平均よりも割高になる傾向があります。
そのため「今の単価 × 将来の年数」で試算するのではなく、物価上昇率を考慮したシミュレーションが必須です。


3.マンション固有の条件を反映する

  • タイル張りか塗装仕上げか
  • 機械式駐車場の有無
  • 給排水設備の材質や劣化状況

こうした条件によって必要な工事内容と費用は大きく異なります。
「うちのマンションに合っているのか?」をチェックすることが重要です。


4.収支シミュレーションを繰り返す

積立金の増額を一度に大きくするのは難しいもの。
現実的には「段階的に上げていく」方法が現実的です。

例えば:

  • 今後5年間は月額○円アップ
  • 10年目以降はさらに○円アップ

といったシナリオを複数パターン作り、理事会や総会で検討すると納得感が高まります。


◆ 札幌市のマンション事情

札幌市は、寒冷地特有の建物劣化や設備不具合のリスクがあります。

  • 屋根や外壁は凍害や雪害の影響を受けやすい
  • 給排水設備は凍結リスクを考慮する必要がある
  • 除雪設備やロードヒーティングの維持費も無視できない

これらは全国的な平均値では測れない部分です。
つまり、札幌市のマンションは札幌市の事情を反映した長期修繕計画を立てなければ意味がないのです。


◆ まとめ:管理会社の計画を鵜呑みにしない!

  1. 管理会社の計画を使うのは問題なし
     → ただし、それだけでは不十分。
  2. 多くのマンションで最終年度が赤字になる
     → 修繕積立金の増額が必要になるケースが多い。
  3. 算出根拠を明確にして、将来に備える
     → 国交省の標準様式、インフレ対応、マンション固有条件の反映がカギ。

◆ 最後に:マンション管理士を活用しよう

結論として、管理会社の長期修繕計画をそのまま利用するのは危険です。
「将来の赤字リスク」をしっかり分析し、積立金の算出根拠を導き出すには、専門的な知識と経験が欠かせません。

その役割を担えるのが、私たちマンション管理士です。

  • 管理会社の計画を第三者の視点で検証
  • 修繕積立金の収支シミュレーションを複数提示
  • 札幌市特有の建物事情を考慮した長期修繕計画を策定

もしあなたのマンションで「長期修繕計画」に不安を感じているなら、ぜひ無料相談を活用してみてください。
札幌市のマンション管理士として、皆さまの資産を守るお手伝いをいたします。