「ようやく修繕積立金の値上げに踏み切れた…」
理事会で何度も議論を重ね、ようやく合意を取り付けた積立金の改定。
これで将来の大規模修繕にも安心――と思ったのも束の間。
ふと出てきた一言。
「この金額じゃ、売れないかもしれないね…」
「近所のマンションと比べて、毎月の負担が重すぎる」
そうなんです。積立金が“高すぎる”と、それ自体がマンションの価値を下げる原因になりかねません。
今回は、札幌市の事例も交えながら、修繕積立金が高すぎることの落とし穴と、適正額の考え方、そして管理組合が取るべき対応策を、マンション管理士の視点から詳しくお伝えします。
🔷 「修繕積立金が高すぎる」と何が起きる?
修繕積立金の引き上げは、確かに必要な施策です。
しかし、その金額が“過剰”になってしまった場合、次のような問題が表面化します。
❗① 購入希望者が敬遠する
マンションを探している人にとって、毎月の固定費(ローン+管理費+修繕積立金)は非常に重要な検討材料。
修繕積立金が相場よりも大きく高ければ、
- 「この物件、負担が重いな…」
- 「他のマンションにしておこう」
という判断に至りやすくなります。
❗② 現在の居住者も“売却”を考え始める
「購入者が減るだけならまだしも…」
実は、今住んでいる区分所有者自身が“将来の資産価値”に不安を感じ、売却を検討するようになることもあります。
- 「今のうちに売っておかないと、あとで売れなくなるかも…」
- 「この支出がこの先も続くのなら、別の場所に住み替えたい」
このように、過剰な積立金が“住み続ける意欲”をそぐ結果につながることもあるのです。
❗③ 資産価値が下がる
高額な修繕積立金は、査定額にも影響します。
- 住宅ローン審査時に「返済比率」が高くなり、融資額が減る
- 将来の値下がりを見越して、買い手が価格交渉を強める
- 流通性の低い“売れにくいマンション”というレッテルが貼られる
このように、良かれと思った積立金の引き上げが、逆に資産価値を押し下げる要因になりかねないのです。
🔶 なぜ積立金が“高くなりすぎる”のか?
✅ 原因①:将来不安による“過剰な積立”
「念には念を入れて」と、将来必要かもしれない全ての工事費を見積もり、十分すぎる金額を設定。
これが積立金の高騰につながるケースは少なくありません。
✅ 原因②:古い修繕計画のまま値上げを決行
過去の建材価格・人件費をベースにした古い計画をそのまま引き継ぎ、積立金だけを上乗せする。
これでは、現実と合っていない積立金になってしまいます。
✅ 原因③:他の支出を見直さず、積立金だけでカバーしようとする
管理費の適正化や修繕工事の効率化をせず、“とりあえず積立金を上げておこう”という発想は、管理組合としての最適解とは言えません。
🔷 「ちょうどいい積立金」を目指すために
修繕積立金は、低すぎても、高すぎてもダメ。
目指すべきは、長期修繕計画とバランスの取れた“ちょうどいい金額設定”です。
📊 適正額の目安(国土交通省ガイドライン)
マンションの戸数 | 適正な積立金(月額/㎡) |
---|---|
30戸未満(小規模) | 250~350円 |
30〜100戸(中規模) | 200~300円 |
100戸以上(大規模) | 150~250円 |
※札幌市のような寒冷地では、若干高めの設定になる場合もありますが、それでも相場感との乖離がないかチェックすることが大切です。
🔶 適正化のためにできること
✅ 1. 長期修繕計画の見直し
- 工事項目や周期に無駄がないか?
- 実際の劣化状況に即した計画か?
- 今後の物価・人件費を現実的に反映しているか?
✅ 2. 修繕工事のコストを見直す
- 相見積もりを取り入れているか?
- 過剰スペックの材料・仕様になっていないか?
- 近隣事例と比べて適正な価格か?
✅ 3. 積立金の段階的増額の検討
一気に上げるよりも、段階的に引き上げることで住民の負担感を軽減しやすく、合意形成もスムーズになります。
ただし、対外的には「適正な管理ができていない」と評価される可能性もあるため、総合的な説明と戦略が必要です。
🔷 札幌市でマンション管理を見直すなら“専門家”と一緒に
札幌市では、冬季の除雪や凍害対策、融雪設備の維持など、特有の修繕コストが発生します。
その分、積立金の設定にも一層の注意が必要です。
🧩 こうした時こそ、マンション管理士の出番!
- 長期修繕計画の精査・作成支援
- 積立金の試算と相場との比較
- 総会・理事会資料の作成支援
- 住民への説明会でのサポート
- 「高すぎず、低すぎず」の適正額を一緒に検討
マンション管理士は、中立的な立場から、将来を見据えた現実的なアドバイスを行えるプロフェッショナルです。
✅ まとめ:積立金は「未来への備え」と「今の暮らし」の両立がカギ!
- 修繕積立金は必要不可欠。でも、高すぎると住民や購入者にとってマイナス
- 今の所有者が売却を検討するほどの負担になっていないか、要チェック
- 「低すぎず・高すぎず・ちょうどよく」設定するには、長期修繕計画とのバランスが必要
- 専門家=マンション管理士の知見を活用しよう!
📣 札幌市の管理組合の皆さまへ
「積立金の金額、これで本当に妥当なの?」
「最近、住民から“高すぎる”という声が増えてきた…」
そんな時こそ、マンション管理士にご相談を。
第三者として冷静に、最適な運営をご提案いたします。
積立金の見直しは、未来の安心をつくる第一歩。
でも、その“安心”が過剰になっていませんか?
バランスを取り戻すために、私たちマンション管理士が力になります。