◆ はじめに

マンションの理事会や総会では、しばしば意見が割れます。
「修繕積立金を値上げしたい」
「大規模修繕工事を今やるべきか、先送りすべきか」
「管理会社を変更すべきか」

こうした議題は、多数決で決まるのが一般的です。

でもちょっと待ってください。
もしそこに、猛烈に反対する少数者がいたらどうでしょう?

「少数の意見なんて無視していいんでしょ?」
「多数決で決まったんだから仕方ないよね?」

…実はそう単純ではありません。
マンション管理は「民主主義」で運営されますが、その民主主義には落とし穴があるのです。

今回は、札幌市のマンション管理士として、多数決の裏側に潜むリスクと、少数者の権利をどう守るべきか、そして専門家の活用方法についてお話しします。


◆ 民主主義=多数決? 本当にそう?

民主主義と聞くと「多数決」を思い浮かべる方が多いでしょう。
確かに、多数決はもっとも分かりやすく、公平な方法のひとつです。

しかし、民主主義は単に「数の力」で物事を決めるだけではありません。
「少数意見の尊重」こそが、本当の民主主義の柱なのです。


◎ マンションでの典型的なケース

例えば、総会で「大規模修繕工事を実施するかどうか」の議題が出たとします。

  • 賛成 70%
  • 反対 30%

この場合、規約や法律に従えば「可決」です。

でも、その30%の人たちが「工事の必要性に疑問がある」「負担が重すぎる」と強く反対していたら?
その声を無視して進めれば、後々トラブルの火種になる可能性が高いのです。


◆ 多数決の落とし穴

多数決の怖いところは、「少数意見が切り捨てられる」点にあります。

  • 「結局、理事会が勝手に決めた」
  • 「少数派は置き去りにされた」
  • 「総会で反対したけど、無理やり進められた」

こうした不満は、時間をかけて不信感となり、やがて管理組合の分裂につながります。


◎ 法律的な観点

区分所有法では、総会での決議について「特別多数決」や「全員同意」が必要な場合が定められています。
つまり、単純に多数決で決めればいいというものではなく、決議の種類ごとに慎重な判断が必要なのです。


◆ 少数意見を尊重するために

では、どうすれば少数派の意見を守りつつ、組合として前に進められるのでしょうか?


◎ ① 議論の場をしっかり設ける

ただ投票で決めるだけでなく、事前に丁寧な説明と議論の機会を持つことが重要です。
資料を配布し、質疑応答を十分に行うことで、反対派の理解を得やすくなります。


◎ ② 決議方法を見極める

区分所有法や管理規約に基づき、単純多数なのか、特別多数なのか、全員同意なのかを判断します。
間違った方法で決議すれば、無効になる可能性もあります。


◎ ③ 専門家を入れる

「理事や組合員だけでは判断が難しい」
そんなときに力を発揮するのが、マンション管理士です。

第三者として中立的に議論を整理し、少数意見を尊重しつつ合意形成を導くことができます。


◆ 札幌市のマンションで増えている相談

札幌市内でも、人口減少や高齢化の影響で、マンション管理の意思決定はますます難しくなっています。

  • 高齢者と現役世代で意見が分かれる
  • 修繕工事の負担をめぐり対立する
  • 反対派が強く主張し、合意がまとまらない

こうしたケースで「多数決で強行する」のは危険です。
むしろ、専門家のサポートを受け、少数派も納得できる形で進めることが望ましいのです。


◆ マンション管理士ができること

マンション管理士は、単なるアドバイザーではありません。

  • 決議の方法が正しいか確認
  • 少数意見を踏まえた合意形成の提案
  • 説明会や意見交換会の運営サポート
  • トラブルを未然に防ぐ調整役

特に「猛烈な反対者」がいるときこそ、専門家の冷静な視点が不可欠です。


◆ まとめ:民主主義を正しく機能させるために

マンションの意思決定は、多数決だけではうまくいきません。
大切なのは、少数派の権利を守りながら合意を形成することです。

  • 多数決は「万能」ではない
  • 少数派の声を尊重するのが真の民主主義
  • そのためには専門家の知恵が必要

もし、あなたのマンションでも「猛烈な反対者」に悩んでいるなら、ぜひマンション管理士に相談してください。

札幌市をはじめ、全国で専門家を活用する動きは広がっています。
合意形成をスムーズに進め、安心できるマンション管理を実現するために、ぜひ一歩踏み出してみましょう。