マンション管理に携わっていると、こんな質問をよく受けます。
「うちのマンション、長期修繕計画がないんですが…これって違法じゃないんですか?」
えっ!?と思われるかもしれませんが、結論から言えば「長期修繕計画がないこと自体は違法ではありません」。
でも、だからといって安心はできません。長期修繕計画はマンションの将来を守る「未来の設計図」のようなものだからです。
今回は、長期修繕計画の目的と考え方について、札幌市のマンション事情も踏まえながら詳しく解説していきます。
🔹 長期修繕計画が「なくても違法ではない」理由
区分所有法やマンション標準管理規約を見ても、実は長期修繕計画の作成は「義務」ではありません。
つまり、法的に「持っていないから即違法!」ということにはならないのです。
ただし、国土交通省はガイドラインの中で、マンションが持続的に維持管理されるためには「長期修繕計画の作成・見直し」を強く推奨しています。
法律で縛られてはいないけれど、実質的には「持っていて当然」の時代になっている、というのが現状です。
🔹 じゃあ、長期修繕計画は何のために作るの?
長期修繕計画の最大の目的は、
適正な修繕積立金の金額を算出すること
です。
マンションは時間が経てば必ず劣化します。外壁の塗装、防水工事、給排水管の更新、エレベーターのリニューアル…。
これらは数年ごとに数千万、場合によっては数億円単位の費用が必要になります。
長期修繕計画がないと、
- 「急に大規模修繕の時期が来たけど、お金が全然足りない!」
- 「積立金を一気に値上げしないと工事ができない!」
という事態に直面してしまいます。
長期修繕計画は、こうした資金不足を未然に防ぎ、住民の負担を平準化するための必須ツールなのです。
🔹 国交省標準様式に準拠するのが望ましい
長期修繕計画といっても、内容や精度はさまざまです。
そこで国土交通省は「長期修繕計画作成ガイドライン」を定め、標準様式を提示しています。
この標準様式に基づいて作成すると、
- 修繕項目が網羅される
- 修繕周期が妥当か検証できる
- 将来の資金不足を早めに把握できる
といったメリットがあります。
逆に言えば、管理会社や組合独自で作った簡易的な計画だと、
「見落としが多い」「積立金の根拠が弱い」といったリスクがあるのです。
そのため、国交省標準様式に準拠した長期修繕計画を作成することが強く推奨されます。
🔹 札幌市における長期修繕計画の重要性
札幌市は雪国であり、建物の劣化要因が他都市と異なります。
- 降雪による屋上防水や外壁タイルの劣化
- 融雪剤による鉄部のサビ
- 冷暖房費用の影響による設備改修の早まり
こうした特殊事情があるため、長期修繕計画は全国平均よりもさらに重要です。
🔹 長期修繕計画を持たないリスク
もし長期修繕計画がなければ、次のようなリスクが現実に起こります。
- 修繕積立金不足による一時金の高額徴収
- 修繕工事の先送りによる建物の劣化加速
- 住民同士のトラブル増加(「なぜ急に値上げ?」「誰の責任?」)
- 資産価値の低下(売りたいときに「修繕積立金不足」と判断される)
これらを考えると、計画がない=違法ではないけれど、リスクは極めて大きいということがわかります。
🔹 長期修繕計画の見直しも忘れずに
一度作ったら終わり、ではありません。
国交省は 「おおむね5年ごとの見直し」 を推奨しています。
- 工事費単価の変動
- 修繕周期の見直し
- 建物の劣化度合いの再評価
これらを反映させてアップデートしていくことで、計画が「生きた未来日記」として機能するのです。
🔹 マンション管理士に相談するメリット
長期修繕計画を適正に作成・見直しするには、建築知識、法律知識、会計的な視点のすべてが必要です。
そこで活用していただきたいのが、マンション管理士です。
- 国交省標準様式に準拠した計画を作成できる
- 修繕積立金の算出根拠を明確に説明できる
- 区分所有者にわかりやすい資料で説明可能
- 論理的に値上げ提案を行い、トラブルを防止
特に札幌市のようにマンション数が多く、気候条件による特殊事情もある地域では、専門家の存在が安心のカギになります。
✅ まとめ
- 長期修繕計画がなくても違法ではない
- しかし目的は「適正な修繕積立金の算出」であり、実質的に必須
- 国交省標準様式に準拠した作成が望ましい
- 札幌市のマンションは雪害など特有の劣化要因があり、計画の重要性は高い
- 作成・見直しにはマンション管理士のサポートが有効
👉 「うちの修繕積立金、このままで足りるの?」
👉 「長期修繕計画を作りたいけど、どこに頼めばいいかわからない」
そんな方は、ぜひマンション管理士にご相談ください。
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