はじめに
なぜ「マンション管理士とは何か」は、これほど誤解されているのか
「マンション管理士って、管理人さんのことですよね?」
この質問を、私は何度も受けてきました。
しかし、マンション管理士とマンション管理人は、役割も立場も、まったく別の存在です。
それにもかかわらず、この2つが混同され続けているのはなぜなのか。
この記事では、その理由をひも解きながら、マンション管理士という資格が生まれた背景と、本来の役割について解説します。
1.マンション管理士は「管理人」ではありません
多くの人が混同してしまう理由
マンション管理人(管理員)は、日常的に住民と接する存在です。
清掃、受付、点検立ち会いなど、目に見える仕事をしています。
一方で、マンション管理士は日常的に姿が見えません。
そのため「誰なのか分からない」「何をしているのか見えない」存在になりがちです。
私自身、出会う人の9割以上の方々から「マンション管理士を初めて知りました」と言われます。
この「見える仕事」と「見えにくい仕事」の違いこそが、誤解の出発点です。
2.マンション管理人とマンション管理士の決定的な違い
役割・立場・責任はまったく別物
マンション管理人は、管理会社から派遣されることが多く(管理組合が雇用しているケースもあります)、基本、管理会社側の立場で業務を行います。
一方、マンション管理士は国家資格者であり、管理組合側の専門家です。理事会や総会に出席して、管理組合に助言・支援することもあれば、管理会社を監督・助言する立場に立つこともあります。
同じ「マンション管理」という言葉を使っていても、
立っている場所がまったく違うのです。
3.なぜマンション管理士という資格が創設されたのか
管理会社任せでは解決できなかった問題
マンション管理は、法律・会計・建築・設備・人間関係が複雑に絡みます。
これを、専門知識を持たない理事長や理事が片手間で担うのは、あまりにも負担が大きいわけです。
実際、管理会社任せにした結果、
・管理内容が分かりにくい
・説明不足による不信感
・トラブルの長期化
など、全国でさまざまな問題が起きてきました。
中には、残念ながら横領や着服といった深刻なケースも報告されています。
その「空白」を埋めるため2001年に創設されたのが、国家資格「マンション管理士」です。マンションの問題を解決する使命を持った、国からのお墨付きの資格なんですね。
4.一口にマンション管理士と言っても、実は3種類ある
資格保有者の立場の違いに注意
マンション管理士の資格を保有している人はマンション管理士を名乗ることができます(名称独占)。しかし、一口にマンション管理士と言っても、実は所属別に3種類のマンション管理士がいます。
①資格保有のみ
助言などによる報酬を受け取らずに活動しているマンション管理士で、多くの場合、自分自身が管理組合の役員を担っており、発言力を強めたい場合に資格を取得するケースが多いようです。
②管理会社所属
これが最もややこしいのですが、管理会社のフロント(理事会などを支援する人)は、管理業務主任者という国家資格を取得することで、重要事項説明などの独占業務を行うことができるようになります。
その管理業務主任者とほぼ同じ出題範囲で、より難関にしたのがマンション管理士です。管理業務主任者を取得したフロントは、上位互換のマンション管理士を取得することで、より専門的な知見を持つと評価されますが、実際に管理組合側の立ち位置で助言することはありませんので、注意してください。
③独立系
必須ではありませんが、都道府県別のマンション管理士会に所属し、報酬を得て管理組合に助言・支援を行っているマンション管理士です。本来的に活躍が期待されているのはこの方々というわけですね。
5.マンションの急増が生んだ、管理の難しさ
民法の「共有」では対応できなかった現実
マンションは「みんなのもの」です。
しかし、民法の「共有」という考え方だけでは、
老朽化、修繕、建替えといった問題に対応できませんでした。
そこで整備されたのが区分所有法です。
区分所有法は民法の「共有」における「全員一致」から一転して、多数決の原理を採用し、様々な決めごとをスピーディに解決できるようになっていきました。
マンション管理は、特殊で高度な法制度の上に成り立っているのですね。
6.マンション管理士は何を解決する専門家なのか
ルールと建物、そして「人」を扱う仕事
マンション管理士の仕事は、大きく分けて3つあります。
区分所有法や管理規約といった「ルール」
→ 何ができて、何ができないのかを整理する
長期修繕計画や大規模修繕といった「建物」
→ お金と工事を長期的に考える
利害が衝突する「人と人との調整」
→ 感情が絡む場面で中立的に支える
単なる法律家でも、建築士でもありません。
マンションという「社会」を整える専門家です。
今まで、マンションの区分所有者だけで頭を悩ませてきた現状を打破する奥の手として期待されていますし、首都圏や関西圏を中心にすでにマンション管理士を活用する土壌が作られつつあります。
7.これからマンション管理士が必要とされる理由
2つの老いと、管理組合の限界
日本のマンションは、
- 建物の老朽化
- 住民の高齢化
という「2つの老い」に直面しています。
役員のなり手不足、無関心層の増加。
これらを、善意と根性だけで乗り切るのは限界です。
だからこそ、第三者の専門家が必要とされる時代に入っています。
多くの人々にとって、一生のうちの最も大きな買い物は「自宅」であり、最も大きな関心ごとは「住生活」なのではないでしょうか?
その自宅が分譲マンションであった場合、マンション管理士という専門家がいるということは、とても頼もしいですよね。
命と同じくらい大切な「財産」なのだから・・・。
おわりに
マンション管理士は「困ってから呼ぶ人」ではない
マンション管理士は、トラブルを処理する人ではありません。
トラブルが起きない状態をつくる人です。
正しく知ることで、マンションの未来は大きく変わります。

