はじめに
マンションの役員をご経験されている皆さん。
今、あなたのマンションに問題はありますか?
自信を持って「いいえ」と言える人はいないはず。
・・・そう、どこのマンションも問題だらけなんです。
問題は「起きてから」では遅い
マンション管理士に相談するタイミングについて、「いついつが適切です」という明確な基準は存在しません。
しかし実務上は、
問題が顕在化した後では、選択肢が大きく制限されている
というケースが非常に多いのが実情です。
本稿では、具体的な場面ごとに整理します。
1.長期修繕計画に違和感があるとき
皆さんは自分のマンションの長期修繕計画を見たことがありますか?
それは計画の初めの年が今から5年以内ですか?
計画は「未来の契約書」である
長期修繕計画は単なる予定表ではありません。
将来の資金負担を事実上決定する文書です。
・修繕周期は妥当か
・単価は適正か
・資金不足は発生しないか
これらを検証せずに承認してしまうと、後戻りが困難になります。
管理会社提案の限界
多くの場合、長期修繕計画は管理会社が作成します。
これは悪いことではありませんが、
- 提案主体と施工提案主体が同一になる構造
- 他社比較が行われない慣行
という構造的課題は存在します。
第三者チェックの意義はここにあります。
国土交通省標準様式とは
長期修繕計画に本物もニセモノもありません。マンションにとって役立つものこそが重宝されるべきです。
しかしながら、各々のマンションが独自の様式で長期修繕計画を作成してしまうと、読み解くのも手間がかかるし、項目を見つけたり、比較するのも困難になってしまいます。
そこで国から用意された「模範的な長期修繕計画の型」、これが国土交通省標準様式です。
管理計画認定制度で「適正な管理をしているマンション」であることを認定されるには、この国土交通省標準様式に準拠している必要がありますので、ご自身のマンションの長期修繕計画が準拠しているかどうか、ぜひ確認してみてください。
2.大規模修繕工事を検討するとき
大規模修繕工事の進め方、いつものあの人に任せっきりになっていませんか?
問題は「工事」よりも「決定プロセス」
金額が大きいからこそ、透明性が不可欠です。
- 設計監理方式か責任施工方式か
- 見積りは何社比較か
- 仕様は誰が決めたのか
ここが曖昧なまま進むと、後から住民間の不信感が生まれます。
紛争予防の視点
区分所有建物では、合意形成の失敗が最も大きなリスクです。
工事トラブルよりも、
合意形成の失敗の方が深刻な後遺症を残します。
修繕委員会などの専門委員会を組織し、できるだけ多くの参加者で議論し、一級建築士やマンション管理士などの専門家を交えて進めていくことで、失敗するリスクを小さくすることができます。
3.理事会が「疲弊」しているとき
仕事が忙しくて理事会どころでない・・・
理事会を開催したいが、誰も集まらない・・・
そんな悩みを抱える理事会がじわじわと増えてきています。
輪番制の構造的問題
現在、多くのマンションで理事は輪番制です。
その結果、
- 経験が蓄積しない
- 判断の基準が毎年リセットされる
- 管理会社への依存が強まる
という傾向が見られます。
専門家の役割は「指導」ではなく「整理」
マンション管理士に管理組合を指導する権限はありません。
しかし、
- 論点整理
- 判断材料の提示
- 法的・制度的リスクの説明
は可能です。
ここに存在価値があります。
固定制理事では、公平性が担保できない。
輪番制理事では、継続性が担保できない。
しかし、マンション管理士を顧問に位置付けている理事会はこの問題をきれいに解決しています。専門家が常に助言をしながら、理事が交代する際もスムーズな引継ぎに貢献してくれることでしょう。
4.管理会社との関係に違和感があるとき
管理会社との関係、うまくいっていますか?
管理員やフロントに不満を抱えていませんか?
不満が爆発する前に
管理会社は長年のパートナーです。
簡単に変更すべきものではありません。
しかし、
- 説明が形式的になっている
- 見積りの根拠が示されない
- 重要議題が流される
といった兆候は要注意です。
「対立」ではなく「健全な緊張関係」
マンション管理士が入ることで、
- 管理会社の説明が具体化する
- 比較資料が整う
- 理事会の理解度が上がる
結果として関係が改善することも少なくありません。
マンション管理士は、組合目線で不満を理解するとともに、ある程度管理会社の法的な位置づけや契約内容の限界を知っていますので、調整役としては適任であることが多いでしょう。
5.外部管理者方式を検討するとき
もはや理事長になりたい人がいなくなっていませんか?
費用を払ってでも外部管理者を推進したい人がいませんか?
導入は簡単、設計は難しい
役員のなり手不足から外部管理者方式を検討するケースが増えています。
しかし、
- 権限範囲
- 報酬設計
- 監査体制
を慎重に設計しなければ、
管理組合の統治機能が弱体化する可能性があります。
外部管理者を検討する際は、その人の、「実績」だけでなく、「理念」や「人柄」も参考にして慎重に議論していきましょう。
もちろん、「来月から導入できます」などという簡単なものではありません。外部管理者導入のための規約改正や体制づくりのためのサポートのため、半年~1年、根気強く支えてくれるパートナーを選びましょう。
6.「何も起きていない今」が最適な相談時期
色々ご説明してきましたが、実は・・・
実務上、最も良いタイミングは
問題が起きる前
です。
トラブル対応は消耗戦になりますが、
予防は冷静に設計できます。
今、このトピックスをご覧になっているあなたはなんとなくこのページを開いたかもしれません。しかし、今こそ「相談のタイミング」なのかもしれませんね。
おわりに ― マンション管理士は「火消し役」ではない
マンション管理士は、紛争専門家ではありません。
本来の役割は
合意形成を円滑にし、リスクを事前に可視化すること
にあります。
「まだ大丈夫」の段階で整える。
それが最も合理的な選択です。

